お腹が痛い。ほっぺたががジンジンする。
なんで、あたし動けないのかな?
男の人がこっちに近づいてくる。すごく楽しそう・・・。
さっき、何があったのかな。
注意しようと近づいて。そこから覚えてないや。
あ、翔くんがこっちに来た。あんなに慌ててどうしたんだろ。
心配してくれてるんだね。昔から変わってない。だから・・・。
え、あの目、いつもの翔くんじゃない。
止めなきゃ。止めれるの、あたしだけだもん。
なんで、動けないの?
あの時は動けて、なんで今は動けないの?
あ、翔くん危ない!
・・・声も出せなかった。最悪だ。
ああ、もう一回危ないよ。でも、声でないや。
やだな。翔くんともうちょっと一緒にいたいのに。
あれ、誰かが翔くん助けてくれた。お礼、言わないと。
でも、もうダメかも。翔くんも私も動けないし。
「大丈夫?今助けるから。そうでしょ?考」
誰だろう。悪い人じゃないみたい。
「人使い荒いなおい。・・・仰せのままに。睨むなって」
二人の顔は目が霞んできて見えない。でも、凄く良い雰囲気。
男の人は冗談みたいな事を言いながら、翔くんを殴った人に近づく。
「さて。そろそろ静かにしないか?疲れるの嫌なんだよ」
「ああ?」
「ちゃんと言葉喋れ。俺はその伸びてる奴に用があるんだ。どけ」
「どかねえよ。お前もこいつみたいにするぞコラ」
「やってみろ」
一瞬だった。多分、頭蹴ったんだと思う。
何事も無かったように男の人は歩いていって、翔くんを助けてくれた。
少し重そうにしてたけど、ゆっくりと運んでくれた。
「とりあえず片付いたな」
「まだ。誰か隣に人呼びに行ったから」
言ったら、噂の人たちはすぐ来た。
五人くらいいる。みんな危ないものもって。
「どうするかな・・。獲物持ちは流石に辛い」
「では、私にお任せ下さい。多少心得ておりますので」
「え?」
その人は、凄くきれいだった。霞んだ目でだってわかる。
顔立ちは言うまでも無く。腰までありそうな長い髪。けして低くは無い身長。
その容姿と鳥のような声は、これから予想される結末にはとても不釣合いで。
それでも、クラスの誰一人としてとめることの出来ないものを持っていた。
一人が、凄くいやらしい顔をしながら歩いて来る。
拳を振上げる。その行き着く先はもちろん-----
どこでも、なかった。
確かに振り下ろされたその拳は、途中から体の回転軸となって、男の人は背中から勢い良く落ちる。
「次の方、どうぞ」
安心した。この二人ならきっとだいじょうぶ。
そう思ったら、眠くなってきた。
おやすみ。きっと、翔くんが起こしてくれるよね?