結局、俺たちは一時間もしないうちに帰れることになった。

あの先生にお礼を言いたかったが、見当たらなかったため後日、という事になった。

多少ふらつきがあるが、いつものことなので気にしない。

正門を出るまでには調子が戻ったのでよしとする。

途中、のどが渇いたと言う真紀のためにコンビニでジュースを買ってやった。

「お金・・・・」

「いいって。看病してくれた御礼。で、今日のことはそれで全部か」

「うん。あと他に聞きたいことあるかな?」

「いや、大体わかったからいいや」

真紀からの説明では、俺は一発殴った後、すぐに椅子で殴られて気絶したらしい。

情けない・・・。

「でも不思議だよな」

「なにが?」

「おまえ、あの二人にやたらとおびえてたろ?」

「ええとね。やっぱり人って話さないと何もわからないんだよ」

「よくある落ちだな」

「でも、クラスのみんな怖がってた・・・」

「そんな落ち込むなって。評価なんてそれぞれだろ」

「そうかなあ・・・それはちょっと違うと思うな」

さらに落ち込んでしまった。

俺の家もうすぐで着くってのに、このままじゃ具合が悪い。

あ、そういえばこの間親父があれ貰ってきてたな。よし。

「なあ、ちょっと俺の家寄ってかないか?」

「え?」

反応が楽しいので二度は言わないでおく。

あ、やっぱり立ち尽くしてやがる。

かまわず先に進み、一分ほど歩いて家にたどり着いた。後ろは振り向かない。

家に入り、ドアに鍵をかけたところで呼び鈴が鳴った。






「いじわる」

出してやったマイナーなメーカーの菓子を食べながら俺を睨んでくる。

なぜかこいつはこれが好物で、よくこれ目当てで家に来ることも多い。

しかも親父と社長の仲が良いらしく、帰ってくるたびにこいつを置いていく。

「ほんと翔くんて確信犯だよね・・・」

「ん?もう一回頼む。煮物食っててよく聞こえなかった」

今日の昼飯は煮物だけだ。ごたごたのせいで米が炊けてない。

「もういいよ・・・」 

「そうか。おかわりいるか?」

「いらない。太るし」

菓子にジュース。どう見ても太る原因なんだけどな。

でも、機嫌直ったみたいだからよしとするか。

「ん。あたしもう帰るね」

「わかった。おばさんによろしくな」

「明日も今日くらいに早起きしてね?」

「今日出来たことは明日も出来る」

「なんだかなぁ・・・。」

ご丁寧に皿まで片付けくれた。そこまで気遣わなくても良いのにな・・・

さて、今日は早めに寝るか。明日も大変だろうし。