考を残しての下校途中、鈴木にあった。
「あ、倉木さん」
「おう。今帰り?」
「はい。僕のグループあまりやる気がなくて。倉木さんも?」
「まあね。今日はきりが良いってことで引き上げ」
嘘をついた。
俺はただ、あそこにいたくなかっただけだ。
「・・・少し、お話いいですか?」
つれられてきた先は、学校の近くの公園だった。
ただ、誰もここを知らないみたいで制服姿は見あたらない。
実際一人でここに来いと言われたら無理だろう。
そこまでこの場所には存在感がない。
「不思議だな、ここ。結構近場なはずなのに誰も気づかない」
「良い場所ですよ。特に一人になりたいときは」
なんだか、ここでは鈴木の存在感が大きい。
いつもより自信に満ちている表情をしていて、なんだか自分が小さくなったような気になる。
「それで、話ってなんだ?」
「少し、昔話をしたいと思いまして」
一つ、息をついて、ゆっくりと鈴木の口が開いた。
「僕は、子供の頃活発だったそうです。今でこそ引っ込み思案ですが。
おかげで体育祭のメンバーになじむのに手間取りました。
そうですね、変わってしまった原因は運の悪さでしょう」
いつもとは違う鈴木の口調に俺は黙るしかなかった。
「昔、とても親しい友達が居ました。まるで、翔さんと丹羽さんみたいな関係の。
それがですね、僕と遊んでいたときに交通事故にあったんですよ。
しかも車通りのほとんどなく、開けたところで」
さらりといっている言葉は、口調にあったものではけしてない。
だけど、今の鈴木はそんなことを気にもせず進める。
「友達は骨折程度で済みました。まあ、それだけならただの運の悪い話ですが。
それから、もう二人友達が出来ました。この子達ともとても仲良くなれました。
でも、この子達も事故に遭ったんですよ。さっきの子と同じように」
「・・・なんでそんなことを俺に?」
そこが気になる。普通ならトラウマになってもいい話だろう。
それを、なんで。
「思い詰めていらしたようなので。まあ、ショック療法ですよ」
「話してて辛くは?」
「全く。もう慣れましたので」
言って、腕時計を見る。
「ああ、こんな時間ですか。そろそろお開きにしましょう」
「予定があるのか?」
俺も時間を確認する。まだそんなに遅い時間じゃあない。
「野暮用ですよ。ちなみにあそこを抜けると学校前に行けます。」
鈴木は示した方向と逆に向かって歩き出す。
「そっちには何が?」
「僕の用事が。ここのでことは口外無用でお願いしますね」
そういったあとすぐ、鈴木の姿は見えなくなった。