「真希、帰ってるかな・・・」
なんだか落ち着かないまま、真希の家の前に立つ。
鈴木との妙な話の後、しばらく我を忘れていた。
それでも帰る道だけは覚えていたようで、何とかあの場所から帰ることが出来た。
鈴木の言ったとおり、抜け道の先は学校のすぐ前で。
もう一回あの場所に行ってみたかったが、通ってきた道を見ると気がそがれた。
どうやって家に着いたかは覚えてない。
だけど、家に着くとすぐに用事を思い出した。
制服のままだと気分が悪いので、家に荷物を置いてからきた、という訳。
真希の家は俺の家とは違い平屋だ。
それでも大きめの家なので、真希は大人数を家に呼ぶことが多かった。
まあ、今はそれも無理みたいだけど。
呼び鈴を鳴らす。
「はーい」
ん、なんか元気そうな声。
「どちらさま、あれ。翔くん」
「・・・・」
たしか具合悪いから代えるって聞いた気が・・・
「どうしたの?上がって良いよ」
「・・・具合は?」
「さっきまでダメだったんだけどね、お見舞いに来てくれたから」
「誰か来てるのか?」
「それはお楽しみに、じゃダメ?」
「・・・上がるぞ」
真希は無視して家の中へ。
居間に行くと、そこには考達が居た。
「お、翔来たか」
「遅かったじゃない?何してたの」
何でこいつ等俺より早くここに来れるのか。
あれ、考の息が荒いんだけどどうしたんだか。
「それより。なんで二人とも真希の家知ってるんだ?」
「あ、私が電話で教えたの。由美さんが来てくれるっていうから」
すごいなそれ。電話だけで目的地まで連れて行けるんだから。
「そうそう。それで、あたしが考から連絡もらって。
考にはここまで走ってきてもらったの」
「・・・そういうことだ」
考の呼吸が収まるまで、もう少し時間がいるな。
挨拶が終わった後、真希が飲み物を持ってきてくれた。
よほど疲れていたのか、考は一気に飲み干してしまう。
そして、細木に叩かれていた。
「痛え・・・。そういや翔はどうして帰ったんだ?
あれからあいつ等少しはまともになったぞ」
「ああ、真希が具合悪かったみたいだから様子見に行くって言おうとしたら
ちょうど考が盛り上がっててさ、言いにいけなかった」
「そうか。ならいいや。大事な幼馴染みだもんな」
半分は嘘だけどな。
「考、何かあったの?」
「ん?なんか話し合いーとかいう脅迫を受けてた」
「え、大丈夫だったんですか?」
「まあな。そういや翔。バスケ組はもう大丈夫だぞ」
「どういう意味だ?」
「とりあえずこっちへのイメージは変わったみたいだな。
そのうちクラス全体に影響出そうだ」
「やっぱり原因は握手してたあの子か?」
「そこまで見てたか。まあ、そうだろうな」
「・・・考、バスケが大丈夫そうなら一つ提案があるんだけど」
なにか気にくわなかったのか、細木が考を睨みながら言った。
「なんだよ。断る」
「あたし、あんたの弱みいくつ知ってると思う?」
「聞く」
できの悪い漫才が始まった。
俺は何とも思わないが、真希はやたらとにやにやしている。
理解できない。
「もし優勝できなかったら、最大の秘密を一つみんなの前で言いなさい」
「な、なんだよその条件?無理だろ」
「優勝すれば良いだけの話じゃない。受けなかったら私がばらすけど?」
弱み握ってる人間って怖いな・・・。
コップの氷が溶けるくらいに時間考えてから、
「わかったよ受けてやるよ練習行くぞ翔」
やけになったようだ。
俺も真希に弱み知られないようにしないと・・・。