六人で行動するようになって一週間くらいたつ。
さすがに一週間もすれば大体のことはわかってきた。
まず、この六人は三グループに分かれる。
俺と真希、考と細木、鈴木と松屋だ。
この二人ずつがとりわけ仲が良い。
まあ、松屋が一方的に見えるんだが、二人ともあんなだからな。
次に考だ。
変な噂がたっていると言っていたがそんな風には見えない。
危険なことを口走るわけでもないし手が早いわけでもなさそうだし。
細木の尻に敷かれてるあたり別段普通の男だ。
細木については言うまでも。
どこかの漫画にいそうな雰囲気の委員長、て感じ。
これまた変な噂がたちそうにもない。
で、松屋についてだ。
お嬢様、ぽいんだけどなんか違うんだよな。
仕草とかは完璧にそれなんだけど、そんな人が俺らと付き合うかな?
最後に鈴木だ。
喋ってる時は普通なんだけど黙ってるときがなんかな。
陰を背負ってる、て言うのかね。背負い過ぎな気もするけど。
大体こんなとこだろう。
体育の時間。
今日は交流を深めろ、ということで自由になった。
まあ、俺らにかまう奴は居ないんだけど。
この六人で何するかな、と考えていると考がボールを持って提案してきた。
「翔、拓、バスケできるか?」
「授業でやった程度なら」
「僕は運動苦手です」
「別にいいって。じゃまず拓からな」
三本先取で、と言って勝手に始めてしまった。
女子組は応援に回ったみたいだ。
鈴木は最初混乱していたみたいだけど、ボールを渡されると顔つきが変わった。
意外とやるのか、と思ったが開始二秒ぐらいでボールを取られてしまう。
じゃあディフェンスは、と思ってもやっぱりだめ。
第一動きが違う。
車と自転車くらいの動きの差があるのだから当たり前、という気がする。
と、いうより考はどう見てもバスケ部並みだ。普通は勝てないだろ。
そんなことを考えている間にゲームが終わった。
あ、鈴木がすごく疲れてる。全然動いてなかったのに。
それでも俺らの邪魔にならないところに行くあたり凄いと思う。
女子組に結構心配されてるよ。大丈夫かおい。
「じゃ、次は翔だな」
といってボールを投げてくる。
「手加減しないぞ?」
「そうしてくれ」
やりとりと黄色い声援で幕が上がった。
まず俺のオフェンス。
さすがに取りには来ないみたいで、ずっと間合いを保っている。
右に二回、軽くフェイントをかけてみるが動く気配がない。
ならばと、勢いをつけて右へ抜ける。
なぜか考はついてこれず、俺は余裕でゴールを決める。
「げ、予想以上に速い」
細木の罵声が聞こえる。若干嬉しそうだけど。
考のオフェンス。
さっき鈴木とやり合ったのを見ていたので大体見当がつく。
取りに行くと簡単に抜かれるからまずは様子見。
お、前に出てきた・・・って速い。
左側に抜かれたがそれでも何とか食らいついていく。
ゴール下まではシュートさせなかったが、そこからが違った。
少し止まったかと思うと、次の瞬間にはもう考が真横にいる。
見えないものを止められるはずもなく、あっさりとシュートを決められた。
その後、善戦はしたものの一本も決められず試合終了。
「なかなかやるな」
「考は強すぎだって」
さすがに疲れたので休むことにした。
「翔君お疲れ〜。凄かったよ」
「そうそう、考に勝っちゃって良かったのにね」
「勘弁してくれ」
「あら、鼻はへし折っておかないと」
「孝さんのしつけ、大変ですね」
「松屋までそんなこと言わないでくれよ・・・」
「ふふ。それでは細木さん、お相手しましょう」
「そうね。行きましょう」
そういって松屋と細木はゴール下まで歩いていった。
「なあ真希、あの二人どうしたんだ?」
「えっとね、なんか意気投合したみたい」
お、始まった。うわ、二人とも上手い。さっきの俺ら並みの試合じゃないか。
それにしても松屋はあの長い髪でよくあんなに動けるな。
「松屋さん・・・頑張って・・・」
「ん、鈴木なんか言った?」
「いえ。何も言ってませんが」
空耳だったらしい。
ふと、視線が気になって周りを見る。
やっぱり視線は痛かったが、その中に少しだけ優しい視線があった気がした。
もう一度探ってみたが、その視線は消えていた。
「翔君、なにかあった?」
「いや、何でもない」
気のせいだったんだろうか。