また、夢を見た。
いつもと同じ、でもどこかいつも違う夢。
暗い中で独り、物を壊す。
ただ、それだけが同じだった。
目覚めは最悪だった。
自分が何をやっているか覚えていないのに、その感覚だけはあるのだ。
昨日の体育で疲れたというのに何故夢を見るのか。
疲れているときは夢を見ないという噂に憤りを感じつつ布団からはい出る。
こけないように階段を降りる。眠いときは階段が最大の敵だ。
無事に階段を降り、ポストを確認する。
よし、新聞以外は入ってない。
未来の粗大ゴミを放置して朝飯の支度に入る。
昨日は珍しく親が帰ってきたので少しだけ品数が多い。
何故かって?残り物があるからだよ。
全部を暖めていたら遅刻するのでそのまま。
ちゃっちゃと食事を済ませ出支度。
時間が余ってるから今日は真希を出迎えてやろう。
外に出て待つこと数分。
多少あわてた様子で真希が走ってきた。
「走ると転ぶぞー」
家近いんだから走ってこなくても良いのに。
俺の目の前までたどり着くと軽く襟を正す。
「おはよ、今日早いんだね」
「ま、こんな日もあるさ」
軽く挨拶をすませ、真希の息が整うまで待って歩き出した。
「昨日の細木さん凄かったねぇ」
「俺は松屋の方が凄いと思ったけどな」
「麗衣さんもだけど、やっぱり細木さんだよ」
「おまえホントに好きだな」
「うん。あんなかっこよくなりたいな」
「別にそのままで良いと思うぞ?」
ああなったら俺が尻にひかれちまうからな。
しかし、こっちの思惑通りに意味を取ってくれなかったらしく、
「え、ほんとに?」
と少し顔を赤くして聞いてきた。
「別にほめてるわけじゃないぞ?」
「えー。でもいいや。そっか、翔君・・・」
いきなりにやけだした。気味が悪い。
それから何を言っても反応がなかったので、二人寂しく歩くことになった。
会話がないまま時間は過ぎ、学校が見えたところで声をかけられた。
「おはようお二人さん」
「あ、おはよう細木さん」
こいつ、細木の声がしたとたん我に帰りやがった。
「おはよ。あれ、考。その湿布どうしたんだよ」
「おう。ま、ちょっとな。ただの打撲だよ」
あの運動神経で怪我かよ。
少し信じられなかったが、余計な詮索はしないでおこう。
意外な答えのせいで話題に困っていると、見知った二つの顔が見えた。
「おはようございます、皆さん」
「お、おはようございます」
鈴木と松屋だ。この二人ってなんだか丁寧すぎるんだよな・・・・。
いい加減なれてきたメンバーで教室に向かう。
なんだか、この雰囲気が好きになってきた自分を感じながら。