いい加減頭も働かなくなってきている六時間目。
松屋の指導の下、鈴木が黒板に文字を書き連ねる。
だめになった頭でも、緑の板に書かれた文字はわかる。
体育祭、と。
鈴木が大体を書き終わったところで、松屋が振り返る。
「それでは、説明を始めます」
あくまで、穢すことのできない雰囲気のまま。
説明中、誰一人として喋らなかったのはクラスが真面目だからではないだろう。
松屋の説明は手元の資料より善意が感じられた。
一言で表すとこうだ。
---良い成績が欲しければ勝ち残れ。
実におかしい。
教育の一環、らしいがそれはないだろう。
実際、松屋も説明する時にいやな顔してたし。
大体なんで行事で成績が決められなきゃならないのか。
それもあって、議会はざわつきの中で始まった。
「それでは、二十分ほど時間を取ります」
そういうと、松屋たちは俺たちの方に戻ってきた。
「みなさんは何に出られるのですか?」
「あたしはバレーかな。聞いた話じゃ一番戦力低いって言うし」
口火を切ったのは細木だ。
「お前何でそんなこと知ってるんだ?クラスじゃ孤立中だろ」
「ん?麗衣から聞いたんだけど」
細木は松屋の方に視線を向ける。
「はい。どうも私は大丈夫みたいですので」
「翔くんは何に出るの?」
いきなり話を振られた。
「ん、何も考えてない」
何か部活をやってたわけでもない俺としてはここは悩みどころだ。
「じゃ一緒にバスケ行こうぜ?翔なら大丈夫だろ」
「昨日ボコボコだったけどな」
俺はあくまで人並みだからさ。
「んなことないって。あれだけできりゃ十分だよ」
「ほめられて悪い気はしないな」
「そうだよ、翔くんかっこよかったもん」
「あれを埋もれさせるのは惜しいわね。ちゃんとやれば考なんか」
「それに翔が出ないんなら俺はさぼるぞ」
そこまで俺を買うのか。
あ、考が叩かれてる。結構痛そうだぞあれ。
「わかったよ。バスケで決まりだ。」
「お二方はどうですか?私はドッヂボールに決めていますが」
あれ、バスケじゃないのか。あれだけ良い動きしてたのに。
俺の疑問は真希が代わりにぶつけてくれた。
「麗衣さんもっと激しいスポーツしないの?」
「はい。私あまり長時間運動できないもので」
「そっか。なんだかもったいないや」
「そういう真希さんはどうなんですか?」
正直、真希はあまり運動ができない。
どうも体の動かし方がわかってないらしく、体育の成績は悪かった。
「えっとね、わたしはバドミントン。知り合いに上手い人がいるから」
「そうですか。拓さんはどうなのですか?」
「あ、僕はドッヂボールです。一番足手まといにならなさそうなので」
拓は話に入ってくるの苦手なんだなぁ、と思う。
そんなに遠慮しなくても良いと思うんだけど。
時間になり、クラスそれぞれが出る種目を決めた。
どうやら、今日から練習を始めるらしい。
熱心なことだ。
少し冷めた感想を持って練習場所へ向かった。