放課後、俺を待っていたのは肉体の反抗だった。
「翔くん大丈夫?」
「だといいな」
「全然大丈夫に見えないよ・・・・」
あんなに動かすんじゃねえとの肉体のクレームは、少し乱暴だ。
筋肉痛がその日に来るあたり、俺はまだ若いのかもしれない。
しかし、種目は違っても同じ時間練習していた真希は元気である。
「なんで真希は元気なんだか」
「わたし、あまり動いてないもん」
練習、という試練を乗り越え俺たちは帰り道の最中だ。
正直、もう道の上で良いから寝たい。
「でも、ちょっと疲れたかな」
「じゃあ俺のうちで休んでけよ」
「そうさせてもらうね・・・」
それにしても幼馴染みとは不思議だ。
簡単に言えば家が二つあるようなものだからな。
お互いの家に入ることに何の抵抗もない。
あまりつきあいが長いと家族みたいになるんだろうか。
「最近、翔くん自分から家に呼んでくれるよね」
「そうか?真希が来る回数そんなに変わってないぞ」
「ううん。すこしだけ増えたよ」
なんだか嬉しそうな顔をして、真希は先に歩いていった。
鍵は俺が、ってあいつは鍵の場所知ってるのか。
なんだか、あいつが笑う回数増えたな。
何とか家にたどり着くと、真希はもうお茶を飲んでいた。
真希ちゃんのお気に入りだからと、母親がいつもおいているものだ。
「おまえ、ホントにそれ好きなのな」
コップに口をつけながら頷く。器用だ。
「あー、もう立てねえ」
鞄をおいてソファに倒れる。
ついでに制服の前をあけ体を楽にする。
「制服、しわになるよ?」
「いいの。どうせ誰も気にしないし」
しょうがないな、という目をしてこっちに来る。
近くにあった椅子を引っ張ってきて、ついでにお茶も持ってきた。
「ん、菓子は食べないのか?」
「いいの。今日はあんまり動いてないから」
少しだけ、悲しい顔をしたのを俺は見つけた。
いつも見てるんだから、それくらいはわかる。
それに、うちに来て何も食べない真希は初めてだしな。
「なんか、あったか」
「え?なにもないよ?」
嘘つくなって。
「いーや。絶対何かあった」
「・・・」
「何年一緒だと思ってる?他の奴ならともかく、真希のことなら大体わかる」
「・・・ばれちゃったね」
俯いたままで顔は見えない。けど、わかる。
「あのね、今日、わたし何も練習してないんだ。わかってたんだけどね、やっぱりだめだったよ。」
「やっぱり、か。」
「うん。みんな、無視、だった」
「細木とかは?」
「おんなじ。麗衣さんは、わからないけど」
「そう、か」
考えたらわかることだった。
俺は考とずっと練習してた。でも、他のみんなは?
鈴木は早めに帰ったから俺もわからない。
でも、真希や細木は。
体を起こして真希と向かい合う。
いつもより、優しく頭を撫でてやる。
恵まれてた俺には、これしかできないから。
だから、ずっと。こいつが、元に戻るまで。
そしたら、きっと笑ってくれるから。