戻ってくると、真希は居てくれた。

どうやら真希達の用事は思ってたより早く終わったみたいで、
俺たちの姿を見た細木が手を振ってくれた。

ただ、

「どうした?元気ないけど」

絶対喜ぶだろうと思っていたのに、ずっと俯いたままだった。

「ううん、ただ、知らないこと知って、疲れちゃった。先に入ってるね」

俺と目を合わせようとしないで、そそくさと家に入ってしまう、

「翔、ちょっと話いいかな?」

呼び止めて話を聞こうと手を伸ばしたとき、細木に呼び止められる。

今まで見たことのない真希の様子に、声を荒げてしまう。

「細木、一緒にいたんだろ?真希に」

「はいはいストップ。あんたらしくない。熱くなるのは考だけで良いんだから」

深呼吸、と窘められる。

が、言われたとおりに出来るはずもなく、

「だから早く言ってくれよ!」

止まらなかった。真希への心配で頭がいっぱいだった。

「翔!」

ぐい、と髪を捕まれて引っ張られる。

「いいか?ちゃんと落ち着け。いつも物静かなお前らしくない。
 丹波のことだからしょうがないかもしれんがな」

気迫と痛みは、俺をとどまらせるのに十分だった。

頭から血が引いたところで手が放される。

「悪かった。こうでもしないと止まらないと」

首を振る。

「いや。おかげで落ち着いた。で、細木。続きいいか?」

細木はにっこりと微笑んで、

「いいわ。でも言うことはあまりないわよ?」

「それでもいいさ」

間髪入れず、

「真希ちゃんには何があったか聞かないこと。少なくとも拓くんから話を聞くまではね」

「そういうことだな。俺たちは鈴木から話を聞く必要がある。わかったか?」

何も知らない俺には、従うことしかできない。

「わかった。・・・真希のところに行っても良いか?心配だ」

「いいわ。私たちはこれで帰るけど、ちゃんとするのよ?」







考達が帰ってから、俺はずっと真希のそばにいた。

何も話さないし、こっちも向かない。

それでも部屋に入れてくれたのだから、俺がここにいる意味はきっとあるのだろう。

向かい合って、沈黙。

九時頃になって、やっと口を開いてくれた。

「翔くん、今日泊まっていかない?」