本当に最悪の夢だった。

今までの最長記録を誇る長さの夢は後味と反対の目覚めを残してくれた。

鳴る前の沈黙を保つ目覚ましに、一時の休暇を与えてベットを出る。

さて、いつもより時間が余ってるな・・・。

特に急ぎの用事も見つからないので、明日の食事の心配をすることにした。

が、体はそう甘くなかった。

体育祭は二日前に終わったはずなのに、階段はまだ俺に死ねとつぶやいている。

真希がやたらとうるさいので、痛いのは筋肉痛だと言うつもりだが、これはもう違う痛みだ。

そういや当日は階段を登れる気がしなくて一階で寝たんだっけか。

あのときは真希が泊まるって言って聞かなかったな。

そこまで心配しなくても良いと思うんだけど。



死にものぐるいで階段を降りきった。

一歩ごとの痛みは少しだけ辛かったけど。

シャワーを浴びてから食事にしようと思って浴室のドアに手をかけたとき、

「翔くん、おはよう」

ドアに鍵をつける必要がなかったかと思うほど自然に真希が入ってきた。

「あ、シャワー浴びるんだ。じゃその間にご飯暖めとくね」

ああ、たしか母さんが鍵渡してたな。翔をよろしく頼むわぁとか言って。

もう何も言えない気がしたので黙って居ることにした。

シャワーを浴び、髪を乾かして戻ってくると、俺が前日用意した物とは別の食物が並んでいた。

四品くらいあるので、どうやらシャワーを浴びている間に作った、という線はなさそうだ。

「これ、真希が作ってきたのか?」

「うん。翔くん、まだ料理するの辛いだろうから、代わりにって」

一応作り置きとカップ麺合ったんだけどな。

それでも、あまり体を動かしたくなかったからありがたい。

なにより、人が作った物を食べないのは人としてどうかと思った。

だから俺は何も言わずにテーブルにつく。

「今日は何とか動けそう?」

「まあな。昨日休みでよかった」

そうじゃなかったら動けたものじゃない。

二人で黙々と食べ続ける。

真希は意外と料理に手間をかける。

いや、手間をかけてやっと普通、というところだ。

料理なんて切って煮て焼いて調味料をかけるだけの気もするが。

大体指に絆創膏とかどこの小説だよと突っ込みたくなるが、それだけ頑張ってるということだ。

そんな激戦の副産物を平らげて、洗い物を下げるのを手伝う。

「あ、帰りに洗い物しに来るからそのままで良いよ」

帰りも来るのか。

「んじゃ、行くか。筋肉痛であまり早く歩けないから、早めに出るぞ」

「うん。ゆっくりゆっくり」

やけに嬉しそうな真希に鍵をかけさせて、通学開始。

考と細木がどうなってるか、実は楽しみなのは真希には秘密だ。