いつもよりも早く出たのは正解だったようで、学校に着いたときにはいつもの時間だった。
実際痛みが引くまでは休もうかと思ったのだが、それをやると真希がずっと俺の家にいるような気がした。
そろそろ真希は俺離れするべきなのだと思うが、良い相手が居ないようだ。
良い奴はそこらに転がってると思うのだが、なにせ本人がそれを拾おうとしない。
で、俺は俺で真希に色々やらせるのが楽なので。
今だって一人で学校に行かなきゃ、となったら絶対にさぼる自信がある。
そうでなかったら途中で倒れてるかのどちらかだ。
・・・どうやら、俺の方が先だな。
なんて考えていると、
「どうしたの?少し休もうか?」
顔に出てたみたいだな。
さて、もう少しだけ頑張りますか。
頑張る、というからには辛いからそう言う言葉を使うのであって。
教室に着いた頃には俺は机の上で倒れていた。
体育祭で出来た友達に顔だけ上げて挨拶をして、後は寝るだけだ。
真希には心配ないと伝えて、周りを静かにする。
クラスのみんなは理解を示してくれているようで、誰も話しかけてこない。
帰るまで寝ようと楽な姿勢を取ったら、松屋と鈴木が居た。
「おはようございます、翔さん」
「ああ、おはよう。二人とも今日はちと遅かったのな」
「ええ、恥ずかしいことにまだ疲れがとれて無くて」
「僕もちょっとばかり休日ぼけです」
鈴木は体育祭の前後から口数が増えた。
それは良い傾向なのだが、どうやら話し下手ではなかったみたいで。
まあ、あの公園での出来事を考えたら当たり前か。
とりあえず敵意は持たれてないからいいやと、これ以上は考えるのをやめた。
「翔さん、寝るのはもう少し後の方が良いですよ?良い物が見られますから」
「ん?何かあったの・・・て」
その光景は俺に痛みを忘れさせるのに十分だった。
そう、考と細木が腕を組んで歩いているのだ。
「由美さん、幸せそう・・・」
おい、真希。
「考は少し困ってるな」
「そうですか?私には満足そうに見えますが」
「僕には何とも・・・」
二人が教室に入ってくる。
俺たちを見つけると、細木が考の腕を凄い勢いで引っ張りながら向かってくる。
「おはよ、みんな。ねぇ聞いてよ。考ったら」
その後、凄い勢いで細木が女子組と喋っていた。
その間、俺たち男子組は、
「考、お疲れ」
「もしかして、ずっとああなんですか?」
「そうなんだよ。あいつ、俺の家まで押しかけてきてさ。しかもお泊まりセット持ってきて」
「・・・夕べはお楽しみでしたね」
「孝さん、不潔です。いくら中学からの付き合いだからといって」
「お前等な、俺をどんな風に」
「そうよ、二人とも」
まったりと考の苦労を慰めていると、細木が乱入してきた。
「私がいくら言っても男らしくしないんだから。あーあ、学校の近くまでは」
「それ以上言うな。ちゃんと妥協してやったろ」
「そろそろ先生来るから痴話げんかやめとけ」
俺の一言で、二人は顔を赤くして席に戻った。
ああ、あいつ等のせいで寝損ねた・・・