兄さんが来るなんて、すっかり忘れてました。

本当にたまにしかお会いしないんですもの。

車に乗り込んでから、私はずっと皆さんの方を見ていました。

突然のことにとまどっているようで、なんだか申し訳ない気持ちです。

兄さん、そのやり方じゃ印象は良くなりませんよ?

特に、孝さんはよく我慢しておられると思います。

ここからでもそれがわかるのに、兄さんは気づいていませんね。

そんなことだから誰も婿様のもらい手がないんですよ。

挑発とも取れる邂逅が終わって、兄さんは車に戻ってきました。

「麗衣、久しぶりだね」

「はい。何ヶ月ぶりでしょうか」

先ほどよりも穏やかな声で兄さんはおしゃべりになります。

「二ヶ月ぶりだね。よかった、良い友達も出来たみたいで」

「皆、いい人です」

だけど、少し目に迷いが見えます。

「だけど」

ああ、やはり気づきましたか。

「あの眼鏡の子、鈴木家の例の子だろう?あの子との付き合いはやめなさい」

「・・・何ででしょう」

予想が付いていました。

ある程度の話は親に行っているでしょうし、あの親は自分では言いに来ません。

なら、距離の近い人に言いに行かせるのが常套手段です。

「あの子の噂は知っているだろう?なら、家のことを考えて」

「私の付き合いを規制する気ですか?」

「そうは言ってない。ただ、あの子は例外として」

「『一つに例外を許すということは、全てに例外が適用できる』と言うことです」

「麗衣は堅すぎるぞ?」

「拓さんも私も実際は似たような物でしょう?」

「それは言うな。まあ、詳しいことは家に着いてから話そうか」

それきり、車の中には声が無くなりました。

・・・私、ムキになりすぎですかね?