松屋の兄が来てから、鈴木と松屋に変化があった。
いつも一緒の二人が驚くほど登校時間がずれるようになった。
それに、前みたいに6人で話すこともなくなった。
とにかく、お互いがお互いを避けている。
俺と考が鈴木、細木と真紀が松屋に事情を聞きに行ったが、何も答えてはくれなかった。
二人を心配した俺たちは、打ち合わせの為に真紀の家に集まることになった。
「じゃあ、始めましょう」
一度全員が家に戻り、すぐに動ける格好になっている。
「考、本当になにも喋ってくれなかったの?」
「ああ。なにもな」
これは本当だ。
どうもこのことについては喋りたくないみたいで。
まあ、明らかにおかしい行動はしてたのだけどな。
「なにも喋ってはくれなかったけど、松屋のほうを何度も見てたな」
「そりゃそうだろ。当人たちの問題なんだから」
ん?なんでそうなるんだ?
「あたし達の方も同じ。麗衣さん、寂しそうだった」
真希は、少し悲しそうな目をしてそう報告した。
松屋は俺たちにも素っ気なくなったからな。
それがきいてるんだろう。
真希、そういうの気にするタイプだからな。
「なあ考。お前、なんか知ってるだろ?」
「あ?何も知らねぇよ」
「嘘付け。松屋の兄貴と知り合いみたいだったろ」
そう。考は絶対に何か知ってるはず。
「ああ、話してなかったな。俺の親父、学校の教頭クラスなんだよ」
はい?
「で、松屋の家からは資金を寄付されてるってわけ。だからだよ、知り合いなのは」
俺と真希は、突然のことに固まってしまった。
え、お偉いさんの息子だったの?
流石に知っていたのだろう、細木は何事もなく茶を飲んでいる。
いや、そんな重要なことは早く教えてくれるべきじゃ?
俺たちの反応を見ることもなく、考達は話を進める。
「そんな人に対して、考はカリカリしすぎよ。見返りは要求されてないんでしょ?」
「明らかに怪しいだろ。大体、」
「ちょっと待て二人とも」
話が飛躍していく前に止める。
「それは後で聞くとして、どうして松屋と鈴木の問題だってなるんだ?」
俺と真希、知らないことが多すぎるみたいだな。
少しでも追いつかないと二人に迷惑をかける、か。
「…あんまり言いたくなかったんだけどな」
考は、いつになくまじめな顔をして、
「鈴木は、松屋と同じくらいに学校に影響力を持った家の生まれだ」
俺に覚悟を決めさせた。