「確かこの辺だった」
鈴木を探してきた場所は、あの広場だった。
俺と鈴木が初めて二人だけで話した場所。
何となく、そこに居る気がして。
とはいえ、俺はその正確な場所を知らない。
わかっているのは、この林の中にあるはず、という確証だけ。
「じゃ、探すしかないだろ。今日は居なくても明日ならいるかもしれんしな」
「簡単に見つかると良いんだけどな」
そう言って、俺たちは二手に分かれて探すことになった。
それから少しして、考から携帯に、広場を見つけたという連絡があった。
「広場は見つけたけど、拓は居ないな」
「そうか・・・。とりあえず学校まで戻るぞ。俺も場所知りたいし」
「おう。あ、気をつけろよ?なんだか誰かに見られてる気がする」
「気のせいじゃないのか?ここら辺に人が来るわけ・・・あるか」
電話を切ろうとした瞬間、後ろの茂みから音がした。
「どうした?」
「誰か居る。とりあえず学校で合流しようぜ」
それだけ言って携帯をしまう。
----音は少し遠かったな。
学校の方に歩きつつ、後ろからの音を拾う。
学校まではそんなに距離はない。
走って三分、このペースなら七分か?
え、七分間も集中もたねえって!
自分でつっこみを入れて、だよなー、と自分で返す。
むなしい掛け合いが終わると同時に、駆け出す。
見た目と違ってここはそんなに足場が悪くない。
それに隠れる場所も少ないため、妨害もなくすぐに学校に着くはず、だった。
開けた場所が見えてきたところで、踏み出した右脚が膝下から払われる。
勿論、林の中にそんな背の高い自然物があるはずもなく。
ああ、誰かにやられたなとか想う暇もなく、目の前には木があるのが林な訳で。
とりあえず反撃は開けた場所で、ということにしてまずは目の前の危機回避。
木と体が衝突するのは避けたいので、まずはそっち優先。
同時に右腕を水平にくの字に出し、肘のあたりを木にぶつける。、
このおかげで、体は木の周りを半回転。
すると、さっきまで後ろにあった左足が進行方向側に着地。
勢いを残したまま体は左足を軸にさっきと逆方向に半回転して10.0。ウルトラC。
残った遠心力を強引に打ち消して直進。はい、すぐに道路に出ることが出来ましたー。
学校までは遠くないはずなので、痛めた筋にむち打って全力疾走。
追って来る奴らの声が聞こえるけど気にしない。
「考なら何とかしてくれるな、うん」
丸投げすることを心に決めた。