いつ頃だったでしょうか。
この家は私の新たな帰る場所になりました。
一人暮らしといえばそう見えるでしょうが、実際は。
ただの体の良い勘当。
拓さんと同じ理由で疎んじられ、家にいることを禁じられた私。
こうやって離しおけば、周りには一人暮らしという風に見えると知っていて。
しかし、流石に心苦しかったのでしょう。
私の口座には、毎月かなりの額が振り込まれます。
公共料金ははそこから引き落としとなり、余った文が私の生活費と小遣いです。
もっとも、物欲のない私は余った分を使おうと思ってませんが。
このことを考えると、なぜだか笑みがこぼれます。
きっと、諦めと自己嫌悪の混ざり合った感情を現すのが笑顔なのでしょう。
着替えをすませ、お茶の用意をしていると呼び鈴が鳴りました。
すぐに入ってこないところを見ると、きっと真希さんでしょうl。
ドアを開けると、そこには予想どうりお二人がいました。
そろそろ、来る頃だと思っていました。
由美さんがいたのは少し意外でしたけど。
上がるように言い、居間に通します。
それまで、真希さんは口を開きませんでした。
由美さんは真希さんのフォローに来たのでしょうね。同じく口を開きません。
「ねえ、麗衣さん」
お茶をお出ししたところで、やっと真希さんが喋ってくれました。
「・・・拓さんと何があったんですか?」
質問に答える前に由美さんを似てみると、
私は全部知っている、だけど真希にはあなたから。
という目をされていらっしゃいます。
「・・・良いでしょう。少し、長くなるかもしれません」
お茶を一口。
さて、こんなに長く喋るのはいつぶりでしょうか。
全部終わった後、真希さんは泣いてしまわれました。
「そんなの、辛すぎるじゃないですかぁ・・・」
「ですが、これが全てです。・・・鈴木家は臆病、いえ。それが普通かもしれません」
「あたしから一つ質問」
「何でしょう、由美さん」
「じゃあ、何で麗衣は拓と仲良くしてたわけ?」
「何ででしょうね・・・」
その答えは、まだ出せないでしょう。
最初と今では動機が違いすぎて、どっちが本当かわからないのですから。
私が言葉を探している間も、真希さんはずっと泣いています。
「真希さん」
「・・・は・・・い」
「私は、あなたが羨ましい」
あなたの輝かしい部分のひとかけらが私にあったなら。
私は、今を抜け出せるような気がして。
「だから、少し慰めさせてください」
優しく、抱きしめたら。
あなたのこころを分けて貰えるのでしょうか。
叶わないことと、わかっていますが。
-----今は、触れさせていて。