放課後、いつもどうりに真希と帰ろうとすると、珍しく断られた。
どこに行くんだと聞くと、女の子の秘密と答えられたのでそこでおとなしく引いた。
そんな断り方は卑怯だと思う。
そういえば、自分1人で帰るなんていつぶりだろうか。
ずいぶんと前から続いたこの習慣はどちらかが病気でなどで休まない限り変わらない。
お互い病気には強い方で休むほどの風邪なんてご無沙汰だ。
そのこともあってかなぜだか町中を歩いて回りたい気分だった。
「翔くん?危ないとこいっちゃだめだよ」
靴箱までは一緒。という提案の元教室は一緒に来た。
その真希は、隣でなにやら俺の年齢を疑う発言をする。
「この歳で危ないとこなんてないと思うぞ」
最近のごたごたのことをいってるのかもしれなかったが、真希に言わせるとそう聞こえる。
「いくつになっても心配は心配なの。ほら、今だって襟曲がってる」
襟と身の安全はかけ離れていると思うが、それを言うと怒られそうなので言わない。
「まったく、制服なんだから身だしなみくらいはきちんとしてよね・・・」
多少不機嫌なのかぶつくさ言いながら少し強めに襟を正される。
力の入れすぎで、首に当たっているところがすれて少し痛い。
「俺としてはおまえの方が心配なんだけどな」
「すぐすむ用事なんだし、大丈夫」
「俺は家に帰るだ―――」
揚げ足をとってやると真希にすごく睨まれた。
俺は怖くなって口を途中で閉ざして言い換える。
「万全の注意を払って家に帰らせていただきます」
真希はよろしい、と言いたげに腕まで組んで首を縦に振る。
この後、靴箱に行くまで会話はなかった。
「寄り道しないで帰るんだよ?」
真希はそういって家と反対方向へ歩き出す。
さて、ここからは自由行動だ。
真希の姿が見えなくなるまでいつもの道を帰って、そこで懐が寂しいことを思い出す。
今日明日ぐらいは何とかなるが一週間は持たないだろう。
冷え切ってから行くのも何なので、まずは銀行に足を伸ばすことにした。
銀行は少し遠く、真希に見つかることもないだろう。