6.つり橋の上で




俺にはもう後がなかった。

ここでこいつを落とさなきゃ・・・・。

何ヶ月俺は振り回されなきゃならないんだ?

惨めな思いなんか金輪際ごめんだ。

さあ、勇気を出して行くんだ、俺。

ゆっくりと後ろから近づいて、ただ、ポン、と背中を押した。







「ん?どうしたの結城」

こいつが俺の憎き相手、名を真穂と言う。

真穂とは学年が変わったときに知り合った。

会うなり意気投合したのはいいが、関係は全く進展しない。

と言うよりはさせる機会がなかったというか。

だってほらね俺、チキンだから。

で、なんとか進展させようと思ったんだけど、どうすればいいかわからなかった。

そのまま時間は過ぎて、今は毎週恒例のお出かけの最中。

今日は少し遠出して来た。

きっとデートっぽい雰囲気が出るかと思って、山の中の公園を選んでみた。

今は巡回コースの中間くらいにある吊り橋の上にいる。

ここ、すっげえ高い。なんつーか、落ちたら即死、みたいな。

「あんまり下覗いてると落ちるぞ、と思って」

「はは、心配してくれてるの?そんなことあるわけないって」

笑いながら肩を叩いてくる。

なんというか、こいつには異性を感じない。

だから俺はこいつを好きになったんじゃないかな。

あれ、異性を感じないって事は同性って事で。

じゃあ俺はホモなのか?いやいやいやいやいや。

頭を振って変な考えを飛ばす。

すっかり正常な思考に戻ったところで、改めて真穂を見る。

よし。女だ。何処からどう見ても女だ。

「ねえ、何でここを選んだの?」

「今までこういうところ来たこと無かったろ?だから」

「ふぅん・・・」

あれ、間違えたか。

つまらなさそうな真穂を見て、自分の空気の読めなさを悔いていると

「ねえ、吊り橋効果って知ってる?」

「ああ。常識だろ」

「・・・私、結城のこと好きよ」

体が固まった。

一歩踏み出して抱きしめたいはずなのに。

手を取りたいはずなのに。

自分の思いを伝えたいはずなのに。

どこも動こうとしてくれない。

「お、照れてるな?」

なのに、こいつは。

なんで俺がやろうとしてたことを全部。

「どう?これからは彼氏彼女ってことで」

真穂の息が耳をくすぐる。

そこでやっと、体が動いた。

「当たり前じゃねえか」

言葉よりも早く、抱き返して。












「吊り橋効果、大成功♪誘われてた時から狙ってたんだよねー」

「俺が狙ってたのに・・・」

「え、何か言ったー?」