20.着信音






私は携帯にメロディなんて入れない。

よく携帯で音楽を聴いてたり、これいいよねー。なんて言ってる人いるけど、どうかと思う。

ドラマとかで携帯がなってるけど、あんなの実際にやったらみんな引いちゃう。

実際外に出たらみんなマナーモードだよね。

だけど、彼氏には特別、なんてこともしてみたい。

特別な人なんだから、特別の扱いをするべきなのよ。

だけどそんな人、ぴょこって出てくるわけでもないもんね。

女友達は多い方だと思うけど、男友達はね。

仲良くなる人が多いほど恋愛する可能性も高い、ってのは当たり前のこと。

でも、入学して一年とかたつと新鮮さが無くなってなぁなぁになるの。

はぁ。

気になってた子、いないでもないのよね。

二年前に少し仲良くなった男の子。

初めは席が近かったから、っていうごく普通の出会い。

ごく普通に話すようになってごく普通に仲良くなった。

ある程度仲良くなったらメアド交換。ある程度まで仲良くなりました、っていう印。

卒業して学校がわかれて、最初は少しメールしてたけど、それ以降はさっぱり。

半年ほどたって、友達から彼が彼女持ちになった、って聞かされて。

そこで私たちはおしまい。

だけどメアドを消すのは忘れててそのまま。

そんな子がいたことを思い出す。

数少ない異性のメアド。これは特別のうちに入るのかしら。

なんだか特別ってことが愛おしくって。

私は初めて落としたメロディをその子専用の着信音にしてみた。

柄じゃない、って思ったけど、設定したときはなんだか恋してる感じだった。

相手も居ないのにね。

それから、私は毎晩鳴らない着信音を待つことにしてみた。




きっと、私は待ち続けるのだろう。

彼氏が出来たって、結婚したって。

あの子のアドレスが変われば、永久に携帯はその音で鳴らない。

私がアドレスを変えてしまえば、永久に携帯はその音で鳴らない。

それでも、私は待ち続ける。

特別って、そういうものだもの。